技術のある会社が下請けから抜け出す方法(事例紹介)

今回は脱下請けの方法を事例を交えてご紹介します。

下請けの会社は下請けの辛さをよくご存じだと思います。

僕もHP制作を請け負う仕事をしていたときは、価格で比べられて辛い仕事をしていたときがあります。

その経験があったことで下請けではなくもっと上流の仕事をしようと決めたことがコンサルタントを目指したきっかけです。

下請けの経営リスク

下請けの経営リスクを整理してみます。

  1. 元請けからの値下げ要求に応じざるを得ない
  2. 元請けの生産拠点移転や需要減少の影響を直接受ける
  3. 突然の契約解除リスクがある
  4. 利益率が低く、自社の努力で売上をコントロールしづらい
  5. 技術力があっても適正な評価を得られにくい
  6. 若手人材の採用・定着が難しい

従業員の立場から見ても、給料も上がりずらいですし、何のために働くのかという意味も見い出しずらいですね。

下請けから抜け出したときのメリット

一方で、もし下請けから脱却できるなら、さきほどとは真逆のメリットがあります。

  1. 利益率の改善
  2. 自社の強みを活かした競争力のある商品開発が可能に
  3. ブランド力の向上
  4. 展示会出展など販促活動の幅が広がる
  5. 若手人材の採用・定着率の向上
  6. 社員のモチベーション向上
  7. 経営の安定化
  8. 新たな市場開拓の可能性

お金の面でも人材の面でも経営がプラスの循環に回っていきます。

下請けから抜け出した会社の事例6選

実際に下請けから抜け出した事例を紹介します。

事例1: 金属加工メーカー タシロ(神奈川県平塚市)

下請けによる経営課題

  • 職人の高齢化による離職
  • 町工場のイメージの悪さから新規採用が困難

取り組み

  • 社員に自由なプロダクト開発の裁量権を与える
  • 社員発案の自社商品(3WAYピザ窯、焚火台)の開発
  • 展示会出展によるアピール
  • 就業規則・給与体系の見直し
  • 女性社員の積極採用
  • 給与査定基準の明確化(スキル習得に応じた昇給)
  • 社会人基礎力育成プログラムの導入
  • どこに転職しても通用するようにビジネスマナーの徹底教育することで社員が自信を持って働き続てくれるように

成果

  • 3WAYピザ窯、焚火台の大ヒット
  • 新卒応募者が大幅増加(1度の募集で200名応募)

この会社の経営資源は「人」ですね。

人的資本経営のお手本といえる成功事例だと思います。

事例2: 金網製造メーカー 石川金網(東京都荒川区)

下請けによる経営課題

  • パナソニックやソニーなど取引先の海外移転による国内需要縮小
  • リーマンショック後の受注激減

取り組み

  • 新素材・技術の開発
  • プロダクトアウトの発想を廃止
  • 課題解決型の提案営業に変更
  • 海外展示会でのPR活動

成果

  • 細かい目の金網折り紙の技術が海外メーカーの注目を集める
  • 機能性と芸術性を兼ね備えた製品で差別化
  • 海外で独自の販路を開拓し、海外の会社から指名買いを受ける
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小長谷直登

依頼されたものを作る会社から課題解決型のコンサルの立場にシフトした成功事例ですね。

事例3: コーヒーフィルターメーカー 三洋産業(大分県別府市)

下請けによる経営課題

元請けからの値下げ要求

取り組み

  • 自社オリジナル商品の開発・販売
  • コーヒーフィルター製造機械の自社開発し、フィルターの厚みや目の粗さを変えることで味を変えることができるフィルターを開発
  • カフェ兼業でコーヒーフィルターの奥深さをコーヒー好きにアピールし根強いファンを獲得

成果

  • 単価アップと利益率アップ
  • コーヒーフィルターの特性を活かした味の差別化(わかる人にはわかる味の違い)
  • コーヒー好きにアピールし根強いファンを獲得
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小長谷直登

もう三洋産業のフィルターじゃないと飲みたくないっていうくらいファンがいるそうですよ。

事例4: 運送サービス ハーツ(東京都品川区)

下請けによる経営課題

  • 大口取引先からの突然の契約解除
  • 社員全員の退職と残った借金が2000万円

取り組み

  • ビジネスモデルをBtoBからBtoCへのシフトしたものの失敗し下請けに逆戻り
  • 大学生から鳥人間コンテストの飛行機を河川敷まで度々運ぶ依頼を受けるようになり、なぜ当社なのか徹底して顧客にヒアリングした結果独自の強みを把握
  • 新サービス「レントラ便」(時間制で車とドライバーを貸し出す)の開発
  • 顧客満足度向上の取り組み

成果

2019年に100%脱下請けを達成
独自のニーズ(学生の機材運搬など)に対応したサービス展開

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小長谷直登

他にも運送会社はあるのになぜうちなの?って徹底して顧客に聞いたおかげで独自のサービスが見つかった事例ですね。

事例5: アウトドアブランド サンライズエンジニアリング(青森県五戸町)

下請けによる経営課題

  • 下請け仕事の面白みのなさによる若手の定着率の低さ
  • 利益率が低い
  • 新しい取り組みをすると仕事が増えることを嫌がり社員が反発

取り組み

  • 自動車部品の金型技術を活かしキャンプ用品の開発・販売
  • ベテラン職人の持つ技術と若手社員の発想力のコラボによる商品開発

成果

  • 会社売上の3割をキャンプ用品が占めるように
  • 社員の離職率低下
  • 社員が積極的に製品開発に参加
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小長谷直登

下請けから脱却する最大のメリットは社員ひとり一人がやる気になって経営に参加してくれることかもしれませんね。

事例6: 生花小売店 ヌボー生花店(長野市)

下請けによる経営課題

  • 法人向け下請け取引への依存
  • 契約解除による売上半減
  • 女性社員の高い離職率

取り組み

  • 生花店初の全社員リモートワークの推進
  • 業務のタスク細分化とリスト化
  • DX化による業務効率化
  • 花業界専用CRM(顧客管理システム)の導入でデータでニーズを把握

成果

  • 店舗業務とバックオフィス業務の分業化による結婚や引っ越しによる離職を防止
  • 接客時間の増加と顧客ニーズへの対応力向上
  • 顧客管理システムのおかげで市場トレンド(自宅用需要増)の早期察知と対応
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小長谷直登

生花店で全社員リモートワークとは、思い切った施策をしますね。

まとめ

これらの事例から、自社の強みを活かした独自製品・サービスの開発、業務効率化、人材育成、マーケティング強化に投資をしていくことで、下請けからの脱却できた事例でした。

どの会社も危機迫った中で、思い切って改革を断行されたと思います。

脱下請けをして、社員全員が経営に参加してくれれば、もしかすると業界を変えるような大きな力になるかもしれませんね。

希望があれば、脱下請けを達成した会社の見学ツアーもやってみたいと思います。

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